「DEIって聞くけれど、結局何をすればいいの?」そう感じたことはありませんか。
AIさん違いを大切にしようって言われても、何から考えればいいのか分からない…。
DEIとは、Diversity:多様性の認知、Equity:公平な機会、Inclusion:皆が活躍できる空間を大切にする考え方です。
企業だけでなく、学校、家庭、地域、子どもたちの未来にも関わる大切なテーマです。
この記事では、DEIの意味を一つずつ分けて、子どもにも伝えられるようにやさしく解説します。
DEIの基本、Diversity・Equity・Inclusionの違い、そして学校や職場で実践するための考え方がわかります。
DEIとは「違いを力に変える」考え方
DEIとは、Diversity、Equity、Inclusionの頭文字を取った言葉です。
- Diversity:多様性の認知
- Equity:公平な機会
- Inclusion:皆が活躍できる空間
人は一人ひとり違います。年齢、性別、国籍、文化、考え方、得意なこと、苦手なこと、育ってきた環境も違います。
その違いを「面倒なもの」と見るのではなく、新しい考えや助け合いを生み出す力として活かすのがDEIです。
近年は、企業だけでなく教育現場でもDEIの考え方が重視されています。グローバル化が進み、外国にルーツを持つ人や多様な価値観を持つ人と協働する機会が増えているからです。
実際に、出入国在留管理庁の発表では、令和7年末の在留外国人数は400万人を超え、過去最高を更新しています。詳しくは出入国在留管理庁の公表資料でも確認できます。
Diversity:多様性の認知とは
Diversityは、一般的に「多様性」と訳されます。
ただし、ここで大切なのは、単にいろいろな人がいる状態ではありません。
人はそれぞれ違うと認め、その違いを尊重し、活かそうとすることがDiversityです。
たとえば、サッカーが好きな子もいれば、ピアノが好きな子もいます。話すのが得意な子もいれば、じっくり考えてから意見を出す子もいます。
どちらが上でも下でもありません。違うからこそ、見えるものが変わり、新しい発見が生まれます。
多様性を邪魔するアンコンシャスバイアス
DEIを考えるうえで避けて通れないのが、アンコンシャスバイアスです。
アンコンシャスバイアスとは、自分では気づいていない思い込みや偏見のことです。
「女の子だからこうだろう」「外国人だからこうだろう」「若いから分かっていないだろう」と決めつけてしまうことがあります。
でも、まったく同じ経験をして、まったく同じ考え方を持つ人はいません。
だからこそ、「本当にそうかな?」と一度立ち止まることが大切です。
マイクロアグレッションにも注意が必要
アンコンシャスバイアスが言葉や態度に出ると、相手を無意識に傷つけることがあります。
これをマイクロアグレッションといいます。
たとえば、外国にルーツがある人へ何気なく「日本語が上手ですね」と言うことも、状況によっては「あなたは日本人ではない」という前提を含んでしまう場合があります。
もちろん、悪気がないことも多いです。だからこそ、相手がどう受け取るかを想像する力が必要になります。
Equity:公平な機会とは
Equityは「公平性」と訳されます。
ここで重要なのは、平等と公平は同じではないということです。
平等は、全員に同じものを渡すことです。一方で公平は、一人ひとりの状況に合わせて、必要な支援や機会を用意することです。
たとえば、全員に紙の資料を配るのは平等です。しかし、目の不自由な人がいる場合、紙の資料だけでは情報を受け取れないかもしれません。
音声データや読み上げ対応の資料を用意することで、はじめて公平に情報へアクセスできるようになります。
女性が活躍できる環境を整える
Equityは、女性の活躍を考えるうえでも重要です。
「女性は出産があるから昇進は難しいだろう」といった思い込みがあると、能力とは関係のない理由で機会が狭められてしまいます。
これは女性を特別扱いするという話ではありません。
性別ではなく、能力や実績に応じて正しく評価される状態をつくることが大切です。
障害のある人も力を発揮できる環境へ
障害のある人が力を発揮するためには、本人の努力だけに任せるのではなく、環境側の工夫が必要です。
たとえば、段差をなくす、文字起こしアプリを使う、資料を事前共有するなど、小さな工夫で参加しやすさは大きく変わります。
近年は、音声を文字に変換するアプリや自動翻訳ツールも使いやすくなっています。技術を上手に使えば、情報格差を減らし、コミュニケーションの壁を低くできます。
ハラスメントやいじめをなくす土台になる
Equityは、ハラスメントやいじめを防ぐうえでも欠かせません。
特定の人だけが不利な扱いを受けたり、声を上げにくかったりする環境では、安心して力を発揮できません。
誰もが公平に参加できる仕組みを整えることで、組織や学校全体の安心感が高まります。
Inclusion:皆が活躍できる空間とは
Inclusionは「包括性」と訳されることが多い言葉です。
ただ、DEIの文脈では、ただ参加できるだけでは十分ではありません。
大切なのは、その場にいる全員が自分らしく意見を出し、力を発揮できる空間をつくることです。
会議や学校のグループ活動で、誰かの声だけが強く、他の人が黙ってしまう状態では、本当の意味でのInclusionとはいえません。
心理的安全性があると意見を出しやすくなる
Inclusionを実現するうえで重要なのが、心理的安全性です。
心理的安全性とは、失敗や反対意見を出しても、拒絶されたり罰を受けたりしないと感じられる状態です。
心理的安全性の研究で知られるエイミー・エドモンドソン教授は、チームの中で対人関係のリスクを取っても大丈夫だと共有されている状態を重視しています。詳しくはダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビューの記事でも紹介されています。
- 分からないことを質問できる
- 反対意見を安心して言える
- 失敗を隠さず共有できる
- 新しいアイデアを試しやすい
このような空間では、メンバーが萎縮せずに意見を出せるため、学習や改善、イノベーションが起こりやすくなります。
DEIが必要とされる理由
DEIが必要とされる理由は、社会がすでに多様になっているからです。
- 外国にルーツを持つ人が増えている
- 働き方や学び方が多様化している
- 性別や年齢だけで役割を決められない時代になっている
- インターネットを通して世界中の人とつながれる
今の子どもたちは、将来、国籍や文化、価値観の違う人たちと一緒に学び、働き、何かを生み出していく可能性が高いです。
だからこそ、違いを怖がるのではなく、違いから学ぶ姿勢が必要になります。
また、ビジネスの世界でもDEIは重視されています。McKinseyの調査では、多様性と企業成果の関係について継続的に分析されており、DEIは組織の持続的な成長を考えるうえで重要なテーマとして扱われています。詳しくはMcKinseyのレポートで確認できます。
DEIを進めるための3ステップ
DEIは、言葉を知るだけでは変わりません。日々の行動に落とし込むことが大切です。
- 自分の思い込みに気づく
- 相手に必要なサポートを考える
- 安心して意見を言える場をつくる
ステップ1:自分の思い込みに気づく
まずは、自分の中にある「普通はこうだよね」という感覚を疑ってみましょう。
普通だと思っていることは、自分の経験の中で作られたものです。相手にとっての普通とは違うかもしれません。
ステップ2:相手に必要なサポートを考える
全員に同じ対応をすることが、いつも公平とは限りません。
見えにくい、聞こえにくい、話しにくい、相談しにくいなど、人によって困りごとは違います。
「この人が力を発揮するには、何があるとよいだろう」と考えることがEquityの第一歩です。
ステップ3:安心して意見を言える場をつくる
Inclusionを進めるには、発言しやすい空気づくりが必要です。
否定から入らない、最後まで話を聞く、少数意見を大切にする。こうした小さな行動が、安心できる場をつくります。
「それは違う」ではなく、「そう考えた理由をもう少し聞かせて」と返すだけで、対話の空気は大きく変わります。
DEIは子どもの未来にもつながる
DEIは、大人だけの話ではありません。
子どもたちが未来を生き抜くうえでも、自分と違う人を尊重し、協力する力はとても大切です。
学校のグループ活動でも、得意な子だけが進めるのではなく、全員が役割を持ち、意見を出せる状態をつくることが大切です。
違いを認め合える子は、将来、国や文化を越えて人とつながる力を持てます。
そして、自分自身も「このままでいいんだ」と感じながら、安心して挑戦できるようになります。
用語補足
アンコンシャスバイアス
アンコンシャスバイアスとは、無意識の偏見や思い込みのことです。
性別、年齢、国籍、見た目、経験などをもとに、知らないうちに相手を決めつけてしまうことがあります。
マイクロアグレッション
マイクロアグレッションとは、無意識の言動によって相手を傷つけてしまうことです。
悪気がなくても、相手に疎外感や違和感を与える場合があります。
心理的安全性
心理的安全性とは、失敗や疑問、反対意見を安心して表明できる状態です。
心理的安全性がある場所では、メンバーが自分を偽らず、よりよい意見やアイデアを出しやすくなります。
まとめ|DEIは「みんなが自分らしく力を発揮する」ための土台
DEIとは、多様性を認知し、公平な機会を整え、皆が活躍できる空間をつくる考え方です。
Diversityは違いを認めること。Equityは一人ひとりに合った機会を用意すること。Inclusionは安心して力を発揮できる場をつくることです。
DEIは、誰か一部の人のためだけの考え方ではありません。
学校でも、家庭でも、職場でも、自分と相手は違うという前提に立つことで、関係は少しずつやさしく、強くなっていきます。
違いを責めるのではなく、違いから学ぶ。その姿勢が、これからの社会を生きる力になります。
